「わかってる!」の先にあったもの。片づけに20分かけた夜の小さな成長

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「みてみて〜!」の先にあった光景

外出から戻ると、我が家にはお決まりのセリフが待っている。「みてみて〜!」。だがこの日は、その一言を聞くまでもなく、部屋に目を引く光景が広がっていた。床にずらりと並んだ箱たち。その中心にいたのは、パックンチョの空き箱——しかもディズニープリンセス仕様。それが、今日の主役「電車」だった。

その箱の中には、家じゅうの小さなぬいぐるみたちが、まるで朝の通勤ラッシュのようにぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。見ているこちらが息苦しくなるような満員状態。それでも彼女は、電車ごっこを始める。ぐらつきながらも進むその列車を、ずんずん進ませる。

片付けに20分。効率より大事なこと

晩ごはんを終えると、そろそろお風呂の時間。そこでいつもなら私がさっと片付けてしまうのだが、今日は時間に余裕もあるし、あえて彼女に最後までやらせてみることにした。

最初は調子よく片付けるかと思いきや、逆に違うおもちゃを取り出してしまう。「ほら、片付けだよ」と声をかけると、「わかってる!」と返してくる。その「わかってる」が3回続いても、片付けは終わらない。いつもならここで諦めて一緒にやってしまうところだが、今日は心を鬼にして見守ることにした。

彼女はしばらくの間、箱の中のものを出しては戻し、また出しては整理し……を繰り返す。遊んでいるようにも見えたが、よく見ると、確かに彼女なりに整えている。その手つきは不器用ながらも、少しずつ「片付け」を理解しようとしているようだった。

気づけば20分近くが経過。なんとか部屋は元通りに。「おお!すごいじゃん!ちゃんと綺麗にできたね」と声をかけると、「うん!」と少し誇らしげな笑顔が返ってきた。

「わかってる!」は、小さな決意

「電車は全部入ったの?」と妻が聞くと、「ここだよ」と指さした引き出しには、パックンチョ電車がぎっしりと詰め込まれていた。あれだけ広げた電車が、見事に“車庫”に収納されている。正直、引き出しの使い方としては疑問符も浮かぶが、本人にとっては完璧な“整頓”だったのだろう。

それにしても、ちょっとした片付けに20分。手伝えば1分で終わることなのに、ついつい「効率」を求めてしまう自分に気づく。今日のように任せてみると、面倒なやりとりも、時間のかかる工程も、彼女の「できた!」を生むための大切なプロセスなのかもしれない。

そう考えると、「わかってる!」の一言も、ただの反抗ではなく、自分の力でやり遂げようという小さな決意の表れなのだろう。

ふと思い出したのは、妻の友人が話していたという「国立小学校受験」の話。正直、うちの娘には無理だな、とぼんやり思う。でも、だからといって何かが劣っているとは思わない。むしろ、こうやって自分のペースで、試行錯誤しながらも成長していく姿は、どんな偏差値よりも尊い、と思うようにした。

(おまけ)よくある3つのナゾ

子どもの「片付け」って、どこまで手伝っていいの?

基本は“見守り”が正解。多少時間がかかっても、自分でやり切る経験が「できた!」という自信につながります。

おもちゃを出してばかりで全然片付けが進まない…それでも任せるべき?

一見遊んでいるようでも、本人なりに整理の感覚を育てている最中。急かさず声かけしつつ、気長に見守ってみましょう。

パックンチョ電車、車庫に停めたまま発車しません。どうしたら?

しばらくはそのまま待機です。次のラッシュが始まるまでは、きっと“終電”なのです。

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