舎人公園で春のピクニック|ネモフィラとターザンロープと娘の「ぶすこ!」

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春の空気と家族の時間

週末が近づくと、我が家ではいつもの会話が始まる。

「今週末、どうする?」

あちこち出かけたし、混雑も気になる。何となく決まらない空気のなかで、妻がぽつりと言った。

「年始以来会ってないし、おばあちゃんに今のうちに会っておこう」

その一言に背中を押され、私たちは舎人公園に行くことになった。

春の舎人公園は、まさに“ちょうどいい”空気に包まれていた。曇り空で風がやわらかく、ネモフィラが青く広がり、ショウゲツという桜が上品に咲いている。派手すぎず、それでいてしっかりと春を感じさせてくれる景色だった。

前日から妻は張り切ってお弁当を用意してくれていた。三色ご飯に桜でんぶをのせた春色のごはん。見た目にも鮮やかで、広げた瞬間に歓声が上がるような仕上がりだった。

5歳の娘は、嬉しそうに「どうぞ」と割り箸をみんなに配ってくれた。その姿に、小さな“おもてなしの心”が育っているのを感じる。

「本当に美味しい」と何度も言う母の言葉に、妻も自然と笑顔になる。そんなやりとりが、春の空気にぴったりだった。

「ぶすこ!」と叫びながら笑った午後

食後のデザートはいちご。爪楊枝でいちごを刺しながら、娘が叫んだ。

「ぶすこ!」

…ん?ぶすこ? 何それ(笑)。

私がツッコむと、さらに「ぶすこ!ぶすこ!」と連呼しながら笑い転げる。つられて母も、妻も、私も笑う。おそらく「ぶっ刺す」から来ている言葉と思われるが、さすがのワードセンスだ。

笑った後は、遊具エリアへ。ターザンロープを見つけた娘が「一人でやってみる!」と宣言。最初は少し手伝ったが、「見ててね!」という言葉に応えて、距離をとって見守ることにした。

彼女は小さな手でロープをしっかりと握り、意を決してジャンプした。

「すごいな…」と自然と声がもれた。

何度も何度も繰り返し、得意げな顔でターザンしていく。

子どもは、ちゃんと見て、感じている

ふと、思った。

今日、娘はおばあちゃんのために、いつも以上に明るく元気に振る舞っていたのかもしれない。無意識かもしれない。でも、場の空気を和ませるような言葉を放ち、笑わせてくれたのは、彼女なりの“気づかい”だったのではないか。

まだ5歳。でも、誰かのために行動する気持ちが芽生え始めている。
子どもは、ちゃんと見ている。感じている。
そして、自分にできる方法で、誰かを笑顔にしようとしている。

帰宅して、娘が布団に入ったとき、私は言った。
「今日は、おばあちゃんを楽しませてくれてありがとうね」

「うん」

娘はそう言って、顔に布団をかぶった。

(おまけ)よくある3つのナゾ

小さな子どもの“気づかい”って、どこで育つの?

「ありがとう」や「うれしい」の言葉がけが、子どもの中にじんわりと芽を育てます。ふとした場面で、そっと花開きます。

おばあちゃんとのお出かけ、どういうタイミングで行くのがベスト?

「そろそろ会っとこうか」が出たときがその時。春の公園は、会話と笑顔がいちばん似合う場所です。

「ぶすこ」は正式な日本語ですか?

いいえ、造語です。でもその場の全員を笑わせた時点で、もはや流行語大賞候補。次回はぜひ語源と使い方の講座をお願いします。

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