はま寿司から銭湯へ|そして現れたネクターおじさん

気まぐれの行き先は、はま寿司
仕事を終え、保育園に娘を迎えに行った。
今日は「オリーブの木」と決めていたはずだったのに、帰り道で急に「やっぱり、はま寿司がいい!」と言い出す。
こういう気まぐれ、娘にはよくある。
以前なら「今日は決めてたから、変えないよ」と言っていたかもしれない。
でも最近は、そんな“気分の変化”も尊重している。
働き終えたあとの平日、夕食の時間が少しでも楽しくなるなら、予定なんて変わったって構わない。
店に着くと少しだけ待ったが、すぐに席に案内された。
彼女は迷いなく「はまっこうどんセット」を注文。
目当ては食事だけじゃない。
セットについてくるガチャガチャのおまけが、一番の目的だ。
正直なところ、寿司屋に来たなら寿司をメインに食べてほしい…というのが親の本音。
でも、そういう思いはひとまず脇に置いて、「自分で選んで、自分で食べる」ことを大事にしたい。すると、うどんのほかに鰻や漬けマグロ、玉子なども手を伸ばしていて、結局しっかり寿司も楽しんでいた。
締めはいつものチョコアイス。「またか」と思いつつも、これが娘の定番。
すっかり満足げな顔で夕食を終えた。
銭湯で出会った“甘いプレゼント”
夕飯のあとは、そのまま銭湯へ向かうことにした。
向かったのは「天神湯」。このルートも、私と娘のちょっとした定番だ。
お腹いっぱいで、体も心もほぐれ始める。
湯船に浸かりながら、なんとなく親子でぽけっと過ごすこの時間が、何よりも好きだ。
そして今回も、予想外の出来事が。
風呂上がり、知らないおじさんに「これ、飲む?」とネクターを買ってもらったのだ。
「知らない人からものをもらってはいけません」
そんな風に日頃から教えていたつもりだったけれど、目の前で笑顔で差し出されたネクターを、すぐには断れなかった。
「いいよいいよ!みんなにあげてるんだから!」
どうやら子どもを見つけるたびに、ネクターを買って配っているらしい。
怪しさがまったくゼロというわけではないが、悪意のある感じもしない。
それでも「こういう場合は、どう娘に説明したらいいんだろう…」と考えてしまう。
戸惑いながらも受け取り、娘に渡すと、一口飲んで「…あまっ!」と声を上げた。
でもなんだかんだで、最終的には9割がた飲み干していた。
お腹はさらに膨らみ、見るとおへそがぽこっと出ている。
「でべそが出てるぞ」と声をかけると、笑って走り出す。
「もらっていい」場合もある──迷ったときの“親の判断基準”
「知らない人からものをもらってはいけない」──それは、子どもを守るための大切なルール。
でも、今日のように、(おそらく)悪意のない優しさに触れる場面もある。
そんなとき、どう行動するかは、やはり親の判断に委ねられる。
大事なのは、「なんでも断れ」と機械的に教えることではなく、どんな人で、どんな状況なら信じてよいのかを、少しずつ経験を重ねながら一緒に考えていくことなのだと思う。誰にでも親切にしていいわけじゃない。けれど、すべての親切を疑う必要もない。
その間で、子どもが人との距離感や信頼の感覚を育てていけるように、親として見守り、支えていきたい。
今回、結局一番うれしそうだったのは、ネクターを渡したそのおじさんだった。
「ありがとう」と受け取ってもらえたことで、おじさんの中にも何か満たされるものがあったのだろう。
その姿を見て、娘にもこういう“やさしさの循環”を、少しずつ感じていってほしい。