欲しかったのは、アリエルと“ちゃんと伝える”力

親子で探した “自分だけの世界”
「ディズニープリンセスの布団カバーが欲しい!」
そのひと言で、静かな土曜の朝が、ちょっとした冒険に変わった。
検索ワードを娘と一緒に入力し、画面に並ぶ色とりどりの布団カバー。彼女の目が、まるでおもちゃ屋に入ったときのように輝き出す。「あれ見せて!」「これも!」と興奮気味にページをめくる姿に、こちらまで楽しくなってくる。
驚いたのは、彼女がすでに“理想のデザイン”を紙に描いていたことだった。
説明するのが難しいなら、絵にすればいい。
そんな発想に、思わず「なるほど」と唸った。
「プリンセスたちが全体にちりばめられてて…」
そんな理想像をもとに探していくが、意外と見つからない。
ようやく近いものが見つかっても、サイズが合わなかったり、怪しげな海外サイトの商品だったり。レビューを読めば「届きません」「連絡しても返事がありません」などの不安な言葉が並び、さすがに注文できない。
何度も検索と比較を繰り返した末に、彼女が選んだのは大きなアリエルが中央にどんとプリントされたカバー。当初の理想とは違うけれど、「これがいい!」と満足げに笑う顔に、こちらも救われたような気持ちになった。
子どもにとって、布団はただの寝具ではない。
そこに広がるのは、“自分だけの世界”。彼女のワクワクが詰まったその布団が届く日が、今から待ち遠しい。
母を思いやり、母を叱る。娘の“両立力”に驚いた午後
その日の午後は、東京駅で妻と待ち合わせ。
娘と二人、少し早めに向かってLINEを送ると、「30分遅れる」との返信。
つい「またかよ…」と、内心でぼやいてしまう。
大人の都合とはいえ、待ち合わせに遅れるのが何度も続くと、ついイラッとしてしまうのが本音だ。
とりあえず、本屋の丸善で時間をつぶすことにした。
しゃがんで絵本を3冊読んだ頃には足も痺れてきて、昼ごはんを先に食べようと沖縄料理の店へ向かった。
すると、その道中で娘がぽつりと言った。
「しょうがないじゃない。お母さんだって、用事があって遅くなったんだから」
……おお。
5歳にして、相手の事情を思いやることができる。
自分が大人としてできていないことを、娘が自然にやっている。
ただ、それだけで終わらないのが彼女の面白いところ。
いざ妻が到着すると、今度は「遅い!なんで遅れるの!!」と、しっかり指摘。
どうやら、「思いやる気持ち」と「言うべきことを言う勇気」(今回は、ただ単に普通に怒っていたようにも見えなくもないが)の両方を持っているらしい。
もしかして、将来はチームをまとめるタイプかもしれない——そんな予感がよぎった。