子どもの「やりたい」が溢れる|涙から始まったひな祭りパーティー

娘の「やりたい」が詰まった、ひな祭りパーティー
仕事を終え、まっすぐ帰宅した日。
理由はシンプルで、彼女が前からずっと楽しみにしていた「ひな祭りパーティー」が待っていたからだ。
前日には、家のテーブルに自ら皿を並べて「パーティーの準備!」と張り切っていた。
その光景がずっと頭に残っていて、今日は一緒に楽しもうと僕自身もどこか浮き足立っていた。
家に着くと、雰囲気はすでに“パーティー風”。
妻が買ってきたお寿司が並び、保育園で作ってきた雛人形もテーブルに飾られている。
さぁ、いよいよパーティーだ!という空気だった。
でも——なぜか、彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれた。
「こんなのじゃない……もっとたくさん、パーティーみたいにしたかった」
「保育園で、もっともっと絵を描けばよかった……」
自分でも楽しみにしていた分、期待がふくらみすぎていたのだろう。
きっと保育園でみんなに話してしまった分、「ちゃんと成功させたい」という気持ちも強かったのだと思う。
私と妻は慌てて声をかける。
「めちゃくちゃパーティーっぽいよ!」
「すごい楽しい感じになってる!いいじゃん!」
なんとか気持ちを立て直してほしくて、思いつく限りの言葉で励ました。
どんな言葉を伝えても泣き止むことなく、彼女はちょっとした“トランス状態”に入った。
きっと、彼女の中には「理想のひな祭りパーティー像」があったんだろう。
しかもその理想を、保育園の友だちにも話してしまっていたから、気持ちはなおさら高ぶってしまったようだ。
思い通りにいかなくても、心から味わえた時間
僕たちは、家にあったお菓子を無造作にたくさん並べて、雰囲気を盛り上げてみた。
「うわー楽しいパーティが始まりそう!いいぞいいぞ!」
彼女はしばらく不機嫌そうだったけれど、少しずつ表情が戻り、パーティーがなんとかスタート。
自分で考えて、自分で準備して、自分で期待して。
でも、その通りにはいかなかった。
そんな悔しさが、彼女の涙になっていたんだと思う。
全部食べ終えたあと、ふと彼女に聞いてみた。
「明日、保育園で今日のこと話す?」
僕が「大成功だったって言えばいいんじゃない?」と声をかけると、
彼女は少し間をおいて、こう返してきた。
「大成功じゃなかった。最初泣いちゃったし」
——ちゃんと、評価してるんだなぁ。
うまくいかなかったところも、自分で認める姿勢。
大人でもなかなかできない。
来月は、つばめ組への昇任パーティーをしたいらしい。
どうやら、毎月なにかしらのパーティーが続きそうだ。