note

「なんさい?」に込めたまなざしと、手帳の記憶

bayabaya

「あ〜〜〜!」と聞こえてきた風呂場

「あ〜〜〜!(泣)」

2階のリビングにいると下のフロアから、ひときわ大きな声が響いてきた。

すぐに「大丈夫??」という妻の声が続く。
その声色から察するに、どうやら深刻なケガではなさそうだ。
むしろ、ちょっと面白がっている感すらある気がする。

様子を覗きに行くと、脱衣所の隅で娘が泣いている。
洗面台にある台の上で、調子に乗って一人で勝手にジャンプして、開いていた扉の角に頭をぶつけたという。お風呂に入る前にちょっとした遊びを一人で毎回やるのだが、今日は気分が高まって、ジャンプでもしたのだろう。おそらくジャンプに深い意味はない。

後頭部は出血している。
「うわ……痛そうだな」

小さな切り傷から、にじむ血。
どう処置すれば良いかわからないので、とりあえずティッシュで止血する。
しばらくすると血も止まり、痛みも落ち着いたようだった。

髪は今日は洗わず、湯船に軽く浸かって、早めにお風呂は終了。

手帳に記された“おぼえておきたいこと”

風呂から上がると、「てちょう よんで〜」と手帳を持ってきた彼女。

妻が、娘の予定が自分でわかるように手帳を用意したらしい。
そこには、予定のほかにもいろいろなメモみたいなことも書いてあるようだ。

その中に、私の母ーー娘にとってはおばあちゃんーーの欄があった。

「なんさい?」

彼女は、ノートの空白を指さしながら、じっとこちらを見つめてきた。
目はまっすぐで、声のトーンには迷いがない。

「たぶん、83さいかな」と答えると、「ふむ」と小さくうなずいて、「おぼえておく」と言った。

どうやら、年齢というものを“ちゃんと”記録しておきたいらしい。
最近は手帳にいろんな数字を書きたがるけれど、とくに「なんさい」という響きに惹かれているようだ。

その姿に、思わずこちらも感心してしまった。
――ああ、年齢って、子どもにとっては「世界のルール」みたいなものなんだな。
「◯◯ちゃんは11さい」「◯◯ちゃんは2さい」「おばあちゃんは83さい」

それぞれの年齢を並べて、自分との“順番”や“くらべかた”を頭の中で整理している。
大人にとっては気にとめない数字も、今の娘にとっては世界の地図のように意味を持ちはじめているのだろう。

「39さい」に、なぜか大爆笑

ところが、ページをめくった次の瞬間。
「お母さんの たんじょうび」の欄を指差すと、急に彼女がケラケラと大笑いし始めた。

「さんじゅうきゅうさい!?うわ〜〜〜!すごっ!」

なにが“すごい”のか、正直まったくわからない。
でも腹の底から笑っている。
あまりに楽しそうなので、こちらまで笑ってしまう。

もしかしたら「よんじゅう」と言われる前の“ギリギリ感”がツボに入ったのか。音の響きが気に入ったのか。あるいは、大人の年齢に対してちょっと茶化すような気持ちがあったのか(そういうところはある)。

いずれにしても、風呂あがりに年齢で爆笑している娘の姿は、なんとも平和だった。

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ばやばや
ばやばや
5歳の娘と「ばやばや」な毎日。迷ったり笑ったり、ときどき立ち止まりながら子育てに向き合っています。娘との日々を父親目線でゆるく綴っており、文章や画像にはAIツールも活用していますが、すべて実体験に基づいています。「あるある」「うちもそうかも」と感じてもらえたら嬉しいです。
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