布団カバー探しが育てた、選ぶ力と思いやり

子どもの「ほしい!」は、時に面倒で、時に尊くて、そして時に、親に思いがけない“気づき”をくれる。
娘が発した「ディズニープリンセスの布団カバーがほしい!」のひと言から、我が家の一日が動き出した。

理想を追い求め、失敗と検索を重ね、ようやく見つけた一枚。そしてその午後、5歳児が放った“まさかの言葉”に、大人が思わず立ち止まる。——そうか、育てられているのは、僕のほうかもしれない。

🎧ブログの出来事をそのまま音楽にしました。 曲はこちら ↓

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プリンセス布団から始まる、土曜の冒険

「ディズニープリンセスの、ふとんカバーがほしい!」
何日も前から言い続けていた。
土曜日になり、「じゃあ、一緒に探してみようか」と応じることとなった。

PCの前にふたりで座り、「プリンセス 布団カバー」と検索してみる。
すると、ズラリと並ぶ商品画像に、娘のテンションが爆上がり。
「これ、みせて!」「あれも!」と、おもちゃ屋に迷い込んだ子どものように目を輝かせていた。

少し驚いたのは、その前に彼女が自分の“理想のデザイン”をすでに描いていたことだ。
「プリンセスたちが、ばーって ぜんたいに いるやつがいいの」

説明が難しいと感じたのか、ちゃんと絵にしていた。5歳なりに、自分の“ほしい”を伝える手段を工夫していることに、ちょっと感心してしまった。

でも、理想はそう簡単には見つからない

ところが、そこからが大変だった。
彼女の描いた理想は「いろんなプリンセスが全体に散りばめられた柄」。
だが、意外とそういう商品は見つからない。

「これ、ちょっとちがう」
「これは、おおきさが ちがう」
「いろがな〜」

ようやくそれっぽいものを見つけても、取り扱っているのは海外の怪しげな通販サイト…。
「届かない」「写真と違う」「英語でしか連絡がとれない」…そんなレビューばかりで、親としてはとても注文できない。

娘の表情も少しずつ曇ってくる。

妥協じゃない、納得の「これがいい!」

いくつかのサイトをぐるぐると見てまわり、結局選んだのは、中央に大きなアリエルがプリントされたデザイン。
当初の理想とは違う。
でも、「これが いちばん かわいい!」と娘は満足げに笑っていた。

ふと気づいた。
「完璧な理想」を手に入れることだけが、子どもにとっての満足じゃない。
「自分で選んだ」という実感が、何よりのごほうびなんだ。

子どもにとって、布団はただの寝具じゃない。
そこは、夜ごとに旅する“自分だけの物語の世界”。

お気に入りの布団に包まれて眠ることが、きっと彼女の毎日に、ちいさな魔法をかけてくれるのだろう。

娘が見せた「思いやり」と「指摘」の両立

午後は、東京駅で妻と合流予定だった。
娘と2人で少し早めに向かい、「ついたよ」とLINEを送ると——「ごめん、30分くらい遅れる」との返信。

……またか。

いや、理由があるのはわかってる。
でも、正直に言えば「何度目だよ」と心の中でぼやいてしまった。

そこで、娘と丸善本店へ。
しゃがみこんで絵本を3冊読む。
足が痺れ、腰が痛い。
時間つぶしも限界に近づいた頃、娘がつぶやいた。

「しょうがないよ。おかあさんも、ようじがあるんだもん」

……うん?
たった5歳の娘が、事情を推しはかって他人を思いやるなんて。
内心で文句を言っていた自分が、ちょっと恥ずかしくなった。

ただ、それで終わらないのが彼女の面白いところ。
妻が到着した瞬間、「おそい!なんで おくれるの!」と、しっかり怒っていた。

どうやら、「思いやる気持ち」と「言うべきことを言う勇気」(今回は、ただ普通に怒っていたようにも見える)の両方を持っているらしい。

もしかして、将来はチームをまとめるタイプかもしれない——そんな予感がよぎった。

✅ 子どもの「欲しい」に付き合うときのチェックポイント

🛏 具体的に何がほしいか、本人の言葉や絵で明確にする
🔍 ネット通販は必ずレビュー確認。怪しいサイトは避ける
📐 サイズや仕様を、家の布団と照らし合わせてチェック
💬 「選ばせる」こと自体に意味があると心得る
🧠 “理想”と“現実”の差も、経験として味わわせる


(おまけ)よくある3つのナゾ

どうしてプリンセスは夜も必要なの?

「夜は怖いから」らしい。なるほど、プリンセスに守られて眠りたいらしい。

なぜ子どもは“最初の理想”にこだわらないの

大人よりも「今の気持ち」が優先されるから。途中で“いい!”と思えばそれが一番になる。

どうして怒ったあとに「ニコッ」とするの?

怒る→スッキリ→機嫌を直すのが、たぶん彼女のメカニズム。切り替えが早くてうらやましい…。

ふりかえりと、すこしだけ心のメモ

今回の“布団カバー探し”は、たかが通販、されど通販。
子どもの欲求に丁寧に向き合うことで、彼女の表現力、思考力、そして選択の力に気づくことができた。
さらに午後の出来事は、親としてハッとさせられるものだった。

子どもは案外、親の言動をしっかり見ている。そして、それを超えてくる。
こちらが思っている以上に、彼女の中にはちゃんと「誰かを思う力」と「伝える勇気」が育っているのかもしれない。

“わがまま”のように見える「ほしい!」の背景には、ちゃんと理由がある。

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