馬橋公園で全力疾走、そして夜は昭和の香りに包まれて

スイミングの成長に、父しみじみ
終日、娘の担当だった。
毎週土曜日の午前中はスイミングを習っている。
いつもは妻に任せているので、二人でプールに行くのはどれくらいぶりだろうか。
彼女がまだ水に顔をつけるのも嫌がっていた頃を思い出す。
先生から「よくできました」と拍手をもらっていた。
バタ足も安定してきていて、もう少しで次の試験に合格できるかもしれない。
ただ、次はレベルが一段と上がる。
今日見た感じだと、次のクラスの子たちは明らか上手い。
彼女がそこについていけるか、正直不安もある。
トイレの謎と、5歳の合理性
自分の番が来るまではプールサイドに座って待っているのだが、おもむろに彼女は立って歩き出した。
「??」
向かっている先を見ると、どうやらトイレのようだ。
プールに出かける前、「家でトイレに行っておいた方がいいんじゃない?」と声をかけたが「プールのとちゅうでも いけるから だいじょうぶ」と言われていた。
家であらかじめ済ませておくのではなく、なぜあえてプールの練習の途中で行くのか謎だ。(他に途中で行っている子はいない)
しかも、トイレットペーパーが濡れていて上手く拭けないから、用を足した後は何も拭かずに、消毒水のところをくぐるだけにしているのだとか…。(子どもが用を足した時はそういうルールらしい…)
食べて、読んで、なぜか全力疾走
プールのあとは、セントラルパークの鎌倉パスタでランチ。パンの食べ放題に釣られて、また食べすぎてしまう。彼女も、パンを3つは食べていた気がする。
お腹を満たしたあとは、絵本ラウンジLOOPなかのへ。
10冊以上は読んだ。
「あかちゃんが きた」と言う絵本がなぜか前から気に入っている。
「えが かわいいし、あかちゃんが うまれてくるところが いいの」と言う。
うちに赤ちゃんが生まれる予定はないけれど、彼女の中では“家族が増える”という物語に惹かれるものがあるのだろう。どうしても欲しいというので本屋で探したが、見つからず、図書館で予約した。
その後、馬橋公園へ。
芝生広場には、家族連れ、楽器を弾くおじさん、カップル、外国人がジュースを飲んでいたり、少年たちが走り回ったりと、まさに“多様性の見本市”。
周りに大きな建物もなく、空が広く、座っているだけで心地よい。
そんな空間に自分も彼女もすっかり魅了されていた。
彼女は、たまたま同じ服を着ていた子に「おんなじだね〜」と近づいていったり、シャボン玉を追いかけて笑いながら走り回っていた。
ぐるぐるぐるぐる走り続けた。
日も暮れかけてきたので「たから湯」に行って、さっぱり汗を流す。
ここの銭湯も彼女のお気に入りだ。
施設が清潔でお湯がぬるい銭湯が好きである。
風呂上がりに売っていた焼き芋の誘惑に負けて1本購入。
彼女はアイス。
いつも思うが、この“湯上がりにちょっと何か食べる”という時間がたまらなく好きだ。
昭和蕎麦屋と、深夜の絶叫
「ばんごはん、そとで たべたい」
その一言に背中を押されて、以前から気になっていた蕎麦屋へ向かうことにした。
引き戸をガラリと開けると──しん…と静まり返った店内。
土曜の夜、19時。
なのに、客ゼロ。
「営業してる…よね?」
思わず娘とアイコンタクト。
奥からゆっくりと現れたのは、注文を取りに来た店主らしきおじいさん。
「なにに しますかぁ〜」という声も、ゆっくり、時代の流れに逆らうようだった。
お座敷もあり、昭和のまま時間が止まったような雰囲気は嫌いじゃなかった。
「こういうの、キライじゃない」と思っていた矢先、ふと鼻に残る、なんとも言えない“あの匂い”。
古い畳の湿気か、換気が追いついていない揚げ物の残り香か…昭和がぎゅっと詰まったようなにおいに、ちょっとだけ心がザワついた。
でも、出てきた蕎麦はちゃんとしていた。コシもあって、つゆも優しい味。
これはこれでアリ。
「おいしいね」と言うと、娘も「うん、まぁ ふつうに たべれた」となんとも微妙な感想。食後、「また来たい?」と聞いたら、「つぎは もっと あかるい みせが いいな」と苦笑い。
たしかに、あの店は明るさじゃないんだ。
雰囲気と、時間と、あの空気を味わう店なんだ。
そういう意味では、**とびきりの“昭和体験”**ができたと思うことにした。
家に帰り、いつものように絵本を読んでから、すぐに眠りについた…と思ったら、夜中の23時ごろ、「ぎゃーーっ」と奇声。
怖い夢を見たのか、昼に走りすぎて脳がバグったのか、それとも昭和蕎麦屋の記憶が今になって効いてきたのか。
いずれにせよ、寝たのは身体だけで、脳は24時間営業らしい。