夕焼け色のお風呂が教えてくれた、子どもの目のチカラ

大人にとってはただの茶色でも、子どもにとっては“夕焼け色”になる。
そんな風に、子どもは世界のすべてを「自分の言葉」で捉え直し、再発見していく。

その感性にハッとさせられた、ある夜の出来事があった。
イベントでもらった入浴剤を、お風呂で使ってみただけの、ほんの小さな出来事。
でも、そこに見えたのは、色と感情がつながる「子どもだけの世界」だった。

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いつもの入浴剤じゃない日

我が家でいつも使っているのは、肌にやさしい“ソフレ”という入浴剤。
白く濁って、ふんわりとした香りがするタイプだ。温かさも、肌触りも安心感がある。

でもその日はちょっと違った。
イベントで無料でもらった、1回分の入浴剤があったのだ。
せっかくだから使ってみようと、娘と“開封の儀”をやることにした。

「なにいろかな〜?」
娘の目がきらりと光る。予想タイムが始まる。
「ピンクかも! でもすいろ(※水色)かもしれない!」

パッケージの見た目だけでは、色まではわからない。
でも、彼女にとってはその“わからなさ”が、まるで宝探しのようなワクワクにつながっている。

茶色じゃなくて、夕焼け色だった

開封して湯船に入れてみる。
粉がじんわりと溶け出し、静かに色が広がっていく。

「あれ? 茶色……?」
思わず、口をついて出たのはそんな感想だった。

正直、大人の私には少し“渋すぎる”色に見えた。
お風呂の中が茶色っぽくなると、ちょっとテンションが下がる。
ピンクやブルーのような“可愛らしさ”や“爽やかさ”を求めていた自分に気づいた。

でも——娘は違った。
「これってさ、ゆうやけいろだね!!」

……そうか、夕焼け色か。

子どもは記憶と色を結びつける

娘のその言葉で、世界の見え方ががらっと変わった。
同じ“色”でも、感じ方でこんなにも名前が違う。

「ほらほら、おとうさん! ほらね、ゆうやけいろ!」
お湯をバシャバシャしながら、嬉しそうに笑う。

子どもってすごいと思う。
目の前の光景と、これまでの記憶や感情をつなぎ合わせて、
そこに新しい意味や“名前”を生み出す力がある。

それは、決して教わったものではない。
感じたままを言葉にして、自分の世界に置いていく。

夕焼け色という言葉は、娘の心の中に残っていた「どこかで見た、感動した空の色」と結びついたものだったのだろう。

子どもと暮らすと見える世界

思えば、大人はいつから色に感動しなくなったのだろう。
便利さや効率ばかりを追って、目の前の「楽しい」を見逃している気がする。

子どもは、目の前のすべてを新鮮な目で見ている。
そして、そこに自分だけの名前をつけ、心を動かし、世界を拡張していく。
その感性は、大人になっても忘れちゃいけない「才能」だと思う。

明日、たったひとつでもいい。
自分の目の前にある「夕焼け色」を見つけてみよう。

20年前にレーシックしたが、また最近ものが見えづらくなってきた私にとって、とてつもなく難しい課題だ。

具体的なヒント:子どもの世界を広げる5つの声かけ

👀 「なにいろだと思う?」と予想させてみる
→正解より、発想力に注目。大人も一緒に想像する。

🧼 「どうやって名前つけたの?」と理由を聞いてみる
→記憶や感情との結びつきがわかるかも。

🗣 「すごい色だね!」と共感して言葉をくりかえす
→“認めてもらえた”という安心感につながる。

🌈 「この色、なにに似てるかな?」と問いかけてみる
→例えの世界が広がっていく。

📷 気に入った色は写真に残して、「名前」をつけて残す
→オリジナル図鑑や絵日記にもなる!

(おまけ)よくある3つのナゾ

子どもと一緒にお風呂を楽しむアイデアは?

入浴剤を使った“色あてゲーム”や、お湯に浮かべるおもちゃ、ちょっとした物語ごっこなど、シンプルな工夫で毎晩が小さな冒険になります。

子どもの感性を育てるには、どう関わればいい?

「そう見えたんだね」と素直に受け止めてあげることが大切です。正解を教えるより、一緒に驚いたり感動したりする時間が、感性の土台になります。

夕焼け色って、けっきょく何色?

見る人が「夕焼けだ」と思えば、それが夕焼け色。つまり…茶色も、子どもにかかればロマンチックな魔法色です。

ふりかえりと、すこしだけ心のメモ

大人の視点では「何色でもいい」と思ってしまうようなことも、
子どもにとっては特別な意味を持つ。

それは、“今、この瞬間”を全力で楽しんでいるから。
だからこそ、大人も少しだけ立ち止まって、その感性に付き合ってみる。
それだけで、一緒に見える景色が変わってくる。

娘と暮らす毎日は、まるで色鉛筆でなぞるような日々。
薄れていた感覚を取り戻させてくれる、貴重な時間なのだと思う。
視力が少しずつ落ちてきている私にとって、「色をちゃんと見る」というのは厳しい挑戦だけれど——

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